リハスレザーの物語

革のカット

物やブランドの裏側には必ず語るべき物語があります。
そして、その物語は誰か1人が作り上げるものではありません。
関わる人全てが物語の主人公であって、それぞれの苦悩、葛藤、希望、夢などが複雑に絡み合い、1つの大きな物語となるのだと思います。
そして、そこにはリハスレザーをお買い求めいただき、使っていただくお客様の物語も含まれるのだと思っています。
 
では、とてもとても長くなりますが、リハビリ型就労スペース「リハス」を運営するセンター長、リハスレザーを作っている障がいを持つメンバー、リハスレザーを導いてきたディレクター、それぞれの物語をお読みいただきたいと思います。

「障がいがあっても稼ぐ」、「自信をもって働きながら自分たちの人生を歩んで行ってもらいたい」

リハビリ型就労スペース「リハス」センター長
寺井あかり

リハスセンター長 2014年1月に株式会社クリエイターズは、リハビリ型就労スペース「リハス」を就労継続支援A型事業所(A型)として設立しました。理想のA型事業所を作りたいという思いがそこにはありました。

 A型事業所とは、障害者総合支援法(旧 障害者自立支援法)に定められた就労支援事業の一つで、一般企業への就職が困難な障がい者に就労機会を提供するとともに、生産活動を通じて、その知識と能力の向上に必要な訓練などの障がい福祉サービスを供給することを目的としています。
 障がい者と雇用契約を結び、原則として最低賃金を保障するしくみの"雇用型"の障がい福祉サービスです。雇用関係を結んでいるということは企業として、雇用を結んだ障がい者には最低賃金以上の働きを求めていき、一企業として自立する(稼ぐ)必要があります。

 しかし当時、全くと言っていいほど自立した(稼いでいる)A型事業所はありませんでした。ひどいところは、ネットサーフィンしている事業所やカラオケなどをして過ごす事業所もありました。

 そんなふざけた事業所に任せていられない。私たちが作る!という熱い志でこの事業所は開設しました。そして、「自立」という思いから理念的要素としてある言葉が生まれました。
 それが今の私たちのスローガンである「障がいがあっても稼ぐ!」でした。

 働いて稼ぐことで、障がい者が戦力として雇用され納税者になります。そうなることで「公費の削減」に繋がり、そして彼らが活躍する機会となり生きていく自信にもつながっていきます。
 障がいを『強み』にし、福祉に依存せず、きちんと生産就労し『納税者』になることを支援できる団体、組織を目指してリハスは作られました。

 でも、「障がいがあっても稼ぐ!」を目指してはいましたが企業として「稼ぐ」ことは簡単なことではありません。ましてや、日々の精神状態や体調が不安定な障がいを持たれたメンバーが計画通り「稼ぐ」ことは非常に困難なことでした。

  • 体調が安定せず毎日出勤することもままならない方
  • 出勤しても周囲が気になり集中できない方
  • 途中まで来たけれど会社を通り過ぎて違うところへ行ってしまう方
  • 被害妄想で人と一緒に働けない方など、、、。

本当に様々なメンバーがいらっしゃいました。

 モノづくりに関してもみんな初心者なので目の前の仕事を淡々とこなすことで精いっぱいでした。当初は仕事があるけれど人と人の交流は最小限で、作業を黙々とこなしているという状況でした。
 今のままではだめだ、次のステップに進むべきだ。みんなならきっとまだまだできると思っていました。そこに今のディレクターの高柳やクラフトマンである高田が参入したことで大きな転機を迎えることになりました。

 障がいを『強み』にするとはどういうことか、メンバーにとって働くとは何か、仕事とは何か、物を誰かのために作って届けるということ、自分たちが作りたいもの、リハスという事業所のあり方についていろいろな話を日々の中で話し合う機会が増えました。様々な新商品を自分たちで考え試作したりという経験をしながら、失敗も含めて経験を積み重ねることの大切さ、うまくいかなくても次につなげること、仲間で協力して作っていくことを学んでいきました。
 このころからみんなの中に主体性が芽生えてきたように思えます。

革メモ帳  そして革の商品を作り始めた時も「やってみたい」と自分で手を挙げた方、自分で決めた方が革専属部隊としてスタートしました。うまくいかない事もたくさんありましたが、へこみながら、お互いを励ましあい支えあいながら着実に作り手に成長していきました。
 その過程で徐々に人と人との交流が増え個の作業から仲間で作り上げる仕事になっていきました。

 もともと個々のメンバーは素直で純粋にコツコツと仕事に向き合う『強み』は持っていましたが失敗を恐れながらもあきらめずチャレンジすることを身に着けていったように思えます。
 人間なので失敗する日もあるし落ち込む日もあります。まだまだのびしろいっぱいのメンバーですが成長のスピードもそれぞれです。
 障がいをもつことで「できない経験」「うまく行かない想い」を積み重ね、社会と距離を感じていたメンバーも遠くない未来、モノ作りを通して自分の存在を社会の中に感じることができ、自分の作ったものが必要とされる経験を積み重ねていって欲しいと願っています。

 「障がい者が障がいがあることが問題ではなく、障がい者が活躍できない社会こそが問題である」
 これは弊社創業者が強い憤りを感じた経験に基づく強い想いです。
 障がいを持つメンバーの障がいは一人ひとりの個性です。
 それを生かせる働き方、働く場所、ブランド、商品を私たちは育てていきたいですし、メンバーには自分たちの個性を生かして作り手として自信をもって働きながら自分たちの人生を歩んで行ってもらいたいと思っています。

 私たちが作り出すモノと想いとモノガタリがたくさんの人に届くことを切に願っています。

メンバーそれぞれの思い、願い

「障がいを持つ私がリハスレザーを作る意味」  H田さん

H田さん

 革の製品作りに携わって半年余り。正直、まだ職人としてはひよっ子の自分たちの製品を皆さんに買っていただいても良いのだろうかと感じることがあります。それは自分の自信の無さ、不安が原因なのかもしれません。

 以前は、障がい者が作っているということを前提で販売されることに違和感を感じていましたが、でも、自分と同じように障がいをもっていて、自分は何もできないと思っている人やその家族の皆さんに、「障がいがあってもここまでできるんだ!」という希望を与えることができるとしたら、それはとてもうれしいと思うようになりました。そしてそれが、障がいを持つ私がリハスレザーを作る意味なんだと思っています。

失敗して落ちこむことも多々ありますが、この仕事ができて幸せです。
自分たちが作った製品がだれかの手に渡り、その方の人生に寄り添っていってくれたらとてもうれしいです。

「形あるものが出来上がるので達成感もあって嬉しい」 Tさん

Tさん

 リハスに来て約5年。ずっと清掃や能登ヒバのハガキや栞のカット作業をしてきて、革の作業は特別な感情もなく、とりあえずやってみようと思って始めたけれど、やってみると難しいしミスもたくさんします。

 でも細かい仕事は思っていたより自分に合っていると感じているし、集中してやれていると思っています。色々考えながら仕事をして、楽しいと思うこと、面白いと思うこともあるし、以前の仕事よりも形あるものが出来上がるので達成感もあって嬉しいです。

 今はまだ工程の一部分だけを担当していますが、将来は1人で全部の工程をできるようになりたいと思っています。
 

「チームみんなで分担して、段々と出来上がって来るのを見ると嬉しい」 N村さん

N村さん

 リハスに来て2年ちょっと。
 革の仕事が始まって最初は縫う作業を少し練習していたけれど、途中ブランクがあって、今はまた革チームに復帰してサンダルなどの新しい商品の試作を担当しています。

 毎日必死に一生懸命やっていて、失敗も多いけれど、モノを作るのは楽しいです。
 チームみんなで分担して、段々と出来上がって来るのを見ると嬉しいし楽しいです。

 将来は自分でスマホケースを作るのが目標です。

「まだまだ若い者には負けていられないなあ」 白山さん

白山さん

 2014年のリハススタート当初からいる最高齢です。55歳まで左官職人一筋で、病気した後にリハス来て、ずっと清掃や能登ヒバのハガキや栞作りを担当してました。去年、革のプロジェクトがスタート。興味があったし、やりたいと思ったけど、やってみると思っていたより難しい。左官の仕事とは違ってミリ単位の仕事で、老眼で目も見えないし肩は凝るし、中腰作業で腰も痛い。でも若い仲間と一緒にモノを作るのは楽しい。わからんことも教えてくれるし。

 最初はみんな素人で、自分も担当する革を切る作業で精一杯で、本当に売れる製品が出来上がるのか心配だったけど、どうにかまずまずの製品が作れるようになって嬉しい。

 チームの仲間がお互いに必死に頑張っているのを見ると、まだまだ若い者には負けていられないなあと思って、毎日頑張ってます。

「以前よりリハスに来るのが楽しくなりました」 K村さん

K村さん

 私は白山さんたちが革の仕事をやっているのを見て自分でもやってみたいと思うようになりました。難しいけれど最初から楽しいと感じることができました。縫う作業が苦手で、縫う前の穴をあける作業を担当していますが、道具を使う作業が自分の性格にあっていると思います。

 以前の能登ヒバの仕事とは違って、考えることや力の加減が必要だったりしますが、それが上手くできると達成感も感じられて楽しいです。だから以前よりリハスに来るのが楽しくなりました。両親も私の体調が良くなり元気になったことをとても喜んでくれています。母はあんたが作ったモノが欲しいと言ってくれています。

 今はまだ自分は穴あけしかしていないけど、チームの仲間が分担して作ったモノだからこそ価値があると思っています。

「以前には見えなかった個人の才能みたいなものが現れて来だしている」 O野さん

O野さん

 実は、初めは革の製品はきっと完成しないだろうと思っていました。自分は革チームに入ってまだ2ヶ月くらいで、一番の新人で失敗も多いので家に帰って反省することが多い日々です。だからまだ仕事の喜びや将来の夢みたいなものは見い出せていないというのが現実です。それは自分自身が夢を持ってはいけない人間だと思っているからかも知れません。

 自分が担当しているのは金具付けや仕上げの塗りという最後の工程なので、ここで自分が失敗したら皆の努力が無駄になるというプレッシャーも感じています。今やるべきことで精一杯でまだまだ余裕もありません。
 でも、革のプロジェクトが始まって、以前には見えなかったそれぞれの中の個人の才能みたいなものが現れて来だしているようにも思います。

 世の中には革製品がたくさんあるけれど、その中でリハスレザーは大量生産でない、少量生産だからこそ長持ちして、買っていただいた製品が10年、20年、30年と長く愛されるものであって欲しいと思っています。

「自分の中では駅伝だと思っています」 N田さん

N田さん

 今年の1月の末に、将来は沖縄に移住して暮らしたいという希望を寺井センター長に伝えたところ、革の技術を覚えて自立するのはどう?と言われるまで、自分が革の製品を作るとは思ってもいませんでした。
 で、作り始めると思っていた以上に難しい。自分は縫う作業を担当していますが、途中で糸が絡まったりして思う通りにいかない。自分には子供がいないけど、きっと子育てってこんな感じで思うようにいかないものなのかなと思っています。

 最初は出来栄え、見栄えを気にする余裕も無かったけれど、今では色々駄目なところが見えるようになって気になって。今は縫う工程だけを担当していますが、いつかは全部の工程をできるようになりたいと思っています。
 で、今年中に、お世話になっている相談支援員さんに革製のIDカードホルダーをプレゼントする約束をしているんです。

 革の仕事をするようになって、自分は1つのことをやり続けるのは嫌いじゃないんだなと分かったのは良かったと思います。
リハスレザーはチームで作っているので、自分の中では駅伝だと思っています。だから自分だけ手を抜けないし、仲間のことを思ってサポートできるようにもなりたいですね。

「自分の可能性を追い求める。その1つが教えること」

ディレクター 高田明博

リハスレザー 美大を卒業後、長年オーダーメイドブランドの会社でジュエリーや時計、革製品の製作と製作チームのマネージメントに携わってきましたが、40歳を過ぎて、会社の中でなく、自分自身の可能性を追い求めてみたい。そんな思いで会社を退職し、自分の工房を設立。1人で工房を運営し自分の事だけを今はすべきなのか、また別のことにも挑戦してみるのか、その岐路にあった時に、クリエイターズとの出会いがありました。
 自分の経験、知識は誰かに伝えることができる。モノ作りを通して人に伝えられるものがあるはずだ。そんな思いがあったのです。

 でも、実際にリハスでの革作りのプロジェクトがスタートして、直ぐに難しい現実に直面しました。以前いた会社のスタッフたちとのギャップ。美術的なこと、技術的なことはもちろん、日々の気持ちの浮き沈み、感情面、仕事への向き合い方、精神面の弱さ、、、、。
 それでも、メンバーのひたむきさ、真面目さ、何か意味があること、意義があることをして日々歩んで行きたい、生きたい。自分が何者なのか、何をしたいのか、何をすべきなのかを探し求めている人たちと接するうちに、以前の会社にいた頃に部下たちから感じた己の野心が原動力である向上心とは異なる、純粋さ、無心さ、無欲さを感じ、だからこそ可能性を感じ、自分に何ができるのだろうかということをさらに強く意識するようになったのです。

 自分の弱さを受け入れることで、強くなって欲しい。仕事を通して何かを学び、何かを作り上げる、達成することの喜びを感じて欲しい。作ったものを通して自分以外の人とも感動や喜びを共感しあい、自分たちが成しえた仕事の素晴らしさと共に人生を豊かなものにしていって欲しいと強く思うようになりました。

 革のプロジェクトがスタートして3ヶ月ほど経った頃でしょうか。メンバーの中に生まれたある変化を感じるようになりました。もっと上手くなりたい、もっと吸収したいという向上心です。彼らは思うようにできない自分の姿を見せたくないけれど見せざるを得ないという現実に向き合い、毎日葛藤しながらも、誰一人脱落することなく自分を信じて付いてきてくれました。
 当初想定していた時間の倍以上かかったけれど、ようやくお客様に見せられる最低限の品質のモノが作れるようになったと思っています。

 でも、ようやくスタートラインに立ったのです。
 手応えはある。やってきたことに間違いは無かったのだと思っています。
リハスレザー作業中 リハスレザーの物語は、ようやく序章が始まったばかりで、メンバーが一人前となり、思うような製品が作れるようになるまでは、まだいくつもの階段を登っていかなくてはなりません。
 自分は、彼らが階段を登るのを可能な限りサポートしていきたい。先頭に立って導いたり、後ろから背中を押しながら。そう思っています。

 障がいがあるからなのか、たまたまリハスの仲間がそうなのかはわからないけれど、彼らにはもっと上手に作れる可能性があります。真面目で素直で、モノ作り、手作りの技術的なことを地道に高めていくには向いている人たちが多いと感じています。
 今後は、リハスレザーというブランドならではの何か、彼らならではの何かを一緒に追い求めていきたいし、それを追い求める彼らの姿を見守っていきたいのです。

 まだ、まだみんな学びながらも成長、進化していかなくてはいけない中で、その意義のある製品作りの中で革だけの素材にこだわらずに、工芸技術や文化的なもの、社会的な要素も更に取り込み、いろいろな革製品を作り一人でも多くの人と共に共感し合えるような物つくりをしていければと思っています。

 また、作る人たち、商品を使う人たちだけがリハスレザーの意義を感じるのではなく、リハスレザーを知ることができる
全ての人にあらためて、動物の命を殺めた資源を使うということはどういうことなのか考えるきっかけになれればと思います。
 食肉文化、害獣駆除によって殺されてしまう動物たちすべては人の行いによるものです。
 動物たちが問題を起こしているのではなく、人が動物を殺さざるを得ない状況にしてきたともいえます。
人が文化を持ち生活していく中で仕事として仕方のないことはあるにせよ、命を頂き、それらを大切に考える気持ちも共に感じていただければ幸いです。
 革を扱えることに感謝し、大切に扱い、そして永く使い続けられる製品にしていく。そして伝えていく。それは、我々にできる使命にも思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
長い長い文章でしたが、まだまだ始まったばかりのリハスレザーの物語。
この先、どんな物語が生まれていくのか、私たちにもまだわかりません。
この物語の続きは、リハスレザーをお買い求めいただきましたお客様や、リハスレザーを見守っていただく皆様と一緒に編んでいくことができましたら、大変嬉しく思います。

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